第8章 病院
「……あのさ、カラ松は俺らがカラ松にフライパンとか投げたの覚えてる?」
おそ松が口を開いた。
その目には、光が宿っていた。
「実はあの時、脳の損傷が酷くて、医者から植物状態って言われてたんだ。あと一週間目覚めなかったら、点滴を外すって言われてさ………でも、ホントに良かった……」
植物状態の人間の点滴を外すってことは、死を意味する。
その事に恐怖を覚えた。
「お前がいない間みんなおかしくなっちゃってさ………」
「おかしくなった?」
「……いっても良いのか?」
おそ松は声色を低くした。
だけど俺は気になって仕方なかった。
「聞きたい。」
俺がそう言うとおそ松は諦めたように話した。
「………チョロ松はあの日食べられなかった梨を毎日のように買ってきて、
トド松は兄弟に暴力を振るうようになった。
十四松は、いつも台所でリストカットをしてたし、
一松は幻覚症状に入って見えないお前と遊んでたよ。」
………!?
俺は言葉を失った。
俺が知らない間に。
俺が見てない間に。
皆がそんな恐ろしいことをしていたなんて。
「…何で、何で止めなかった!?」
こんなの、異常だ。そんな兄弟、見たくもなかった。
「止められなかったんだよ!!…止めれば止めるほど症状は酷くなるし…俺の精神も限界だったんだ!!!」
おそ松はそう言うと、自分の左袖のパーカーを捲った。
「………!?」
おそ松の左腕には、
血の滲んだ包帯が巻かれてあった。