第7章 二人
「一松……?」
後ろには、一松がいた。
一松だけじゃなく、チョロ松、トド松、十四松。
十四松の袖には、赤はなく、いつもの黄色い袖だった。
「兄二人がみっともない、泣き止めよ。」
「顔がぐしゃぐしゃだよ?」
「ハッスルマッスル元気に行こー!!」
「…………なんて、ごめんなさいカラ松兄さん。」
四人は、謝り、綺麗な涙を流していた。
「ほらな、お前は一人じゃないんだよ、カラ松。何があっても六人で一つ。絶対バラバラになんてさせない。生きていくんだ。」
おそ松が、俺の肩を抱く。
俺は、松野家に生まれし次男。
四人の弟を持ち、唯一の兄貴を持つ。
松野カラ松なんだ。
「帰って来い、カラ松兄さん。」
一松が手を差しのべる。
その手は、お前は一人じゃない。と語りかけているようだった。
「ああ。」
小さく呟き、その手を取り合う。
その瞬間、
黒い闇が飴細工のように割れ、俺は光の洪水に身を任せて目を瞑った。
一松はまだ手を握ってくれた。
光がゆっくりと反射し、目を開ける。
見開いた先は、見慣れない白い天井と、薬品の匂いだった。