第1章 悲哀
俺は黒い世界にいた。
夢でいつも見る、瞼の裏の世界。
ただ今回はいつもと違った。
下を向くと足が見えた。
瞼の裏だと足は見えない筈だろ?
おまけに。
俺は身体が軽く浮遊感があった。
世界もぼやけずハッキリと映る。
そうか、俺、死んだのか。
兄弟を残して死ぬ何て心残りしか残らないな。
まるで他人事のような感覚だった。
暗い暗い世界を浮遊していると小さな鳴き声が聞こえた。
ぐずぐずと、
守ってやりたくなる、可哀想な声。
グスッ
「…………カラ松」
「!!!」
誰か俺の名前を呼んだ。
確かにハッキリと『カラ松』と呼んだ。
俺を知っている奴が泣いている。
俺を頼って泣いている。
赤の他人じゃないなら尚更だ。
待ってろ、
必ず助けてやるから、
守ってやるから。
「カラ松兄さん……………」