第2章 深まる関係
「普通じゃん。」
「いや…まぁ、いいや。じゃあ七瀬、元気でな。」
「うん、徹もね。また夏休みに。」
「ん。それじゃあ、行くわ。」
そう言って徹は改札の中に入って行った。
徹の姿が見えなくなるまで見送ると、紫音が言った。
「羽山君って身長なんセンチだっけ?」
「確か春の健康診断で測った時、175センチって言ってたよ?」
「ふーん…あと5年で10センチか。頑張ろ。」
紫音は一人言の様にそう呟いた。
「身長、気にしてるの?」
「七瀬が羽山君に抱きついたの見たらね。やっぱり男の方が高い方が様になるなぁって。」
「あたしは気にしないよ?むしろ大きくてごめん…。」
「大丈夫。これから伸びるから。」
強がっている紫音は少し可愛かった。
紫音は気付いていないだろうが、あたしは紫音と付き合ってからヒールの靴をはくのをやめた。
紫音が自分より小さいのが嫌なのではなくて、あたしが紫音と並んだ時に大きく見えるのが嫌だから。
シュリならこういう気持ち分かってくれるかな。
シュリが元気になって戻って来たら、また二人で色々な話をしたい。
カフェで時間も忘れて語り合ったあの時が、もう随分と前の出来事の様に感じる。
シュリ、徹…頑張って。
「七瀬、行くよ。」
そう言って紫音が左手を差し出してきて、あたしはその手を握った。