第8章 思い出の欠片
昴輝は、涙を流しながら結紀の首筋に強く噛み付き血を吸う。痛みを感じない結紀だったが、昴輝の行動に思わず固まってしまった。
「……昴輝……。」
「これ以上、大切な者が居なくなるのは嫌だ!お前まで失ったら、オレは………生きている価値なんて………。」
顔を上げれば、口の周りは結紀の血で真っ赤で、昴輝の心からの叫びだった。こんなにも昴輝を苦しめていたのか、とばかり考えて結紀の心は先程よりも強く縛られる。だからなのか、自然と結紀の頬にも涙が流れ始める。
そのまま結紀は昴輝を優しく抱きしめ、頭を撫でる。それは、まるで母親のような感じだった。結紀の手は温かく昴輝は目を瞑って委ねる。昴輝が結紀から離れるのは暫く経ってからだ。
「…わりぃ。おやすみ。」
昴輝がそんな事をいいながら結紀の部屋から出ていった。昴輝の顔はどこか寂しそうだった。出ていった方向を暫く見つめた。もう、死んだ奴は戻ってこない、それは、結紀と昴輝はわかっていたことだ。静かな夜が続こうとしていた。