第1章 序章
その後数日は、余計なことを考えないようにと寝る間も惜しんで仕事に打ち込んだ。
「ーいっ…おいっ!椎名!」
『っはい!』
呼ばれていることに気づかないくらい集中していたのか肩を叩かれるまで気づかなかった。
あわてて肩を叩いてきた先輩に話を伺う。
ー編集長が呼んでる
『編集長…ですか?』
ーーーーーー
『転勤…?』
編集長が言うには今私が働いている編集部の支店で一気に人が辞めてしまい困っているので増援を…とのことだった。
「確か椎名くんは宮城の支店から来たんだよね?
右も左も分からない人より、もともと働いていた人の方がいろいろわかるかと思ってね。
お願い…できないかな…?」
足元がガラガラと崩れ落ちるような気がした。
お前はもうここにはいらない
必要ない
そう言われているような気がした。
タイミングって重なるもんだな。
口角を無理やりあげ自嘲気味に笑った。
東京にはもう何もない
ワタシハ
イラナイ……
ーーーーーー
編集長に挨拶をして部屋を出ると自分のスマホを取り出し電話をかける。
数回コール音が鳴ると受話器の向こうから声がする。
『もしもし…
うん、
母さん
あたし宮城に帰るね?』