第33章 決勝戦vs白鳥沢
ボールを拾うリベロも苦戦しているが
ボールを拒む『壁』も苦戦している。
ブロックに入るタイミングがズレ悔しそうな顔をしている蛍君。
いつの間にか私の手は力が入り、手のひらに爪が食い込む。
そんな時に明光さんの心強い言葉
「少なくとも蛍は感覚で動くタイプとは真逆に位置する選手ですよ。
アイツは自分の力を信じていない。培ってきた感覚も信じない。」
「ちょっ!兄貴がそういうこと言う⁈」
….ん?
『冴子ちゃん違う違う。これ、褒めてるのよ?』
冴子ちゃんは不思議そうな顔で私と明光さんを見ている。
「うちの弟はガッカリするくらい冷静なんです。」
そう。
蛍くんは今まで積み重ねてきた自分の実力なんて信じてない。
信じるのは目の前にある情報のみ。
ほら、少しずつブロックのタイミングが合ってきた。