第32章 春高予選決勝前夜
そしてきたのが繋心センパイ行きつけの居酒屋「おすわり」
頼んだ料理は絶品でついつい作り方を教えてもらいたくなるような味だった。
料理の美味しさに感動していると不意に質問された。
「なぁ椎名、月島だけどさ…」
『蛍君がどうかした…』
普通に名前で呼んじゃったけど、武田先生もいるんだよね?
ふと武田先生の方を見る。
顔はいつものにこにこ顔。
「椎名さんと月島君のことなら知ってますよ?月島君隠す気なさそうですもんね?」
デスヨネー
誰かが私に近づくと無言の圧力っていうか睨みきかせてるっていうか…
わからないわけがない。
『ちなみに…大丈夫なんでしょうか…いろいろと。』
「まぁ、本来はあまりいいものではありませんよね?学生の本分は勉強ですし…」
そうだよね…
周りから見たら9歳も歳の離れてるカップルなんて…
それに相手が高校生だから不純異性交遊に見えちゃうのかな…
なんて悶々と考えていると、武田先生は先ほどの話に続けるように言葉を告げた。
「でも、月島君は椎名さんと出会ってから本当によく成長した。バレーに関してもですが心も成長してます。成長を止める付き合いはダメですが成長を促す付き合いをしているのならば僕は何も言いませんよ?」
ああ、武田スマイル…
癒される…
「でも本当、最近の月島はスゲェよなー。ブロックの腕どんどん上げてきてるし。くぅー、羨ましいぜ。」
『だから繋心センパイは万年ベンチ温め組なんですよ。羨ましがらないでもっと努力してたらコート入れたかもしれないのに…』
「うっせー!」
なんで騒いでいたらスマホにメッセージアプリのメッセージが届いたらしくポケットに入れていたスマホが震えた。
『失礼します。』
断りを入れスマホを覗くとメッセージが1件。
見てみるとたった一言
会いたい。
『すいません。編集部から呼び出しがかかったので行きますね。』
お勘定をテーブルに置き、2人に挨拶をすると嘘がばれないように私はそそくさとお店を後にした。