第20章 春高予選!一次‼︎
その時、小さな声が烏養監督を呼ぶ。
「先生!
翔ちゃんのあの速攻も1st(ファースト)テンポなんですか?」
烏養監督が連れてきた小学生だ。
『ファーストテンポ?』
不思議そうに烏養監督を見ると呆れた顔をされる。
「お前、マネージャーやってたのにわかってねーのか。」
『す…すいません…』
「チビ太郎がでかいやつとどう戦ってんのか知りたいならわかってた方がいいぜ?
説明できるか?」
「うん!」
小学生の男の子はいい返事をすると説明を始めた。
「えっとねー、高ーくあげたトスに合わせて余裕を持って助走を始めるスパイクが3rd(サード)テンポ!」
トスが上がったのを見てから走り出すのが3rd。
「トスが上がるのと大体同時に助走を始めてトスに合わせて打つのが
2nd(セカンド)テンポ!」
トスと同時に走り出すのが2nd。
「スパイカーが先に助走に入ってきてそこにトスを合わせるのが1st(ファースト)テンポ!」
みんなが速攻って言っているやつのことだね?
『ってことは日向君と影山君のあの速攻は1stテンポ?』
「ブロックに勝つということは、ブロックよりも高い打点から打つということ。
チビ太郎対2m。
より先にてっぺんに到達したものが勝者。
チビ太郎のあれは厳密には1stテンポじゃない。」
1stテンポじゃ…ない?
「セッターがトスを上げる時点でスパイカーの助走及び踏み切りがすでに完了している状態。」
1stテンポより早いテンポ…
「マイナステンポだ。」
マイナス…テンポ……
ホイッスルが鳴り響く。
日向君が打ったスパイクで、烏野は1セット先取した。