第1章 序章
ー別れよう。
彼とは付き合ってもうすぐ2年。
1年前から同棲をはじめ、結婚も勿論意識し始めていた。
でも、最近は自分の仕事が忙しく家に帰ってもたまった家事をすることで手一杯になり、ろくに話もできていなかった。
また彼もここ数ヶ月帰宅時間が遅く、家には寝に帰るだけの状態が続いていた。
それでも、彼の気持ちは変わらないと信じていた。
いや、信じたかった。
『理由は?』
持っていた紅茶のカップをソーサーに戻しながら無意識に聞いていた。
理由?
言われなくてもわかっている。
「あ…えっと…」
わかってるけどあえてわからないふりをした。
自分でも思う。
こんな女面倒臭い。
仕事から帰ってきた彼のスーツから香る女物の香水。
見たことのない彼の趣味ではないネクタイ。
求められなくなった身体。
「ごめん…ほかに好きな人ができた。」
ほら。