第19章 最後のワガママ
「泣かないでください。」
孝支君の指が涙を辿る。
なかなか止まらない涙は孝支君の指を濡らしていく。
『ごめん…ごめんなさい』
「謝らないで…泣かせるために言ったんじゃない…」
そっと頬に手を添えられる。
キス…される?
思わず目を瞑ると、額に温かい感触が触れ、すぐに離れた。
「オレの最後のワガママ、聞いてもらっていいですか?」
私がうなづくとそっと抱きしめられた。
するとすぐに背中から鼻をすするような声が聞こえてきた。
泣いてる…
わたしは孝支君の背中に腕を回そうとして
やめた。