第13章 夏の長期合宿2日目‼︎
「かのさっ⁉︎」
戸惑う蛍君をよそにさらにぎゅっと蛍君を抱きしめる。
『いいよ?抱きしめて?』
「いや…でも……」
『私のこと…嫌い?』
「いや…その……」
戸惑う蛍君が可愛くてついつい意地悪な言葉を言ってしまう。
『だったら、ぎゅってしてほしいな?』
蛍君は観念したかのように私の背中に手を回す。
「夏乃さん…まだ酔ってます?いつもよりしつこい…」
『しつこいってひどい!自分の欲望に素直なんです!』
蛍君の意外と厚い胸板に顔を埋めると、頭をぽんぽんと撫でられる。
『たまには甘えたいの…だめ?』
もぞもぞと腕の中から這い出し蛍君を見つめると、蛍君は困った顔をする。
「これでも色々抑えてるんですからね…?」
『わかってるよー』
私が言い返すと、蛍君は私を抱きしめたまま後ろに倒れ、布団に寝そべった。
この部屋に呼び出したもう1つの理由をふと思い出し、私は蛍君に尋ねた。
『ねえ、蛍君?』
「なんですか?」
『体調不良の原因…寝不足って…』
一気に赤くなる顔。
回された腕に一気に力が入り、私は蛍君の胸元に顔を埋めさせられ、顔を見えなくされてしまった。
『蛍…くん?』
その時なぜか思い出したのは、寝ている時に手のひらに感じた温もり。
『もしかして…昨日、手…』
「知りません。」
さらに強めに抱きしめられ、私の考えが肯定だということに行き着く。
『私のせいで寝不足にさせてごめんね?』
「別に…あのまま部屋に戻っても寝る場所なんてないだろうし…」
今、さりげなく認めたことに蛍君気づいてない。
まぁいいか。
『明日も合宿なんだし今日はしっかり寝なきゃね?』
あれ?
返事がない。
慌てて蛍君の腕から這い出すと蛍君の瞼は閉じ、早くも規則正しい寝息が聞こえてきた。
うそ…
蛍、寝ちゃった…?
『蛍君? 蛍君?起きて?私、澤村君に蛍君帰すって言っちゃったよ?』
昨日も寝ていないらしい蛍君はいくら揺すっても起きる気配がない。
『蛍君!起きて?さすがに私、澤村君に怒られるのは勘弁!』
起きない。
『どうしよう…』
こうして今日も夜は更けていくのでした。