第9章 7月8日、合宿2日目。
澤村くんが東峰くんにボールを上げる。
スパイクを打つために東峰くんが助走をつけながら飛び上がる。
手を振りあげたその時、同じタイミングで横から日向くんが飛び出してきたのだ。
軽い接触。
2人とも怪我はなかった。
でも、日向くん。
エースである東峰くんのボールを奪おうとしてた。
この接触事故と同時に烏野のコートに緊張が走るのがコートの外にいる私にもわかった。
そんな中、日向くんは速攻で目を瞑るのをやめると言い出したのだ。
「今のままじゃ、おれが『打たせてもらう』速攻じゃだめだ。」
体育館に響く声。
みんなの纏う空気がぴりぴりし始めたのをひしひしと感じた。
ーーーーーー
試合が終わりペナルティをこなしたみんなを武田先生が集合させる。
そして唐突に言い放った。
「皆さんはここにいるチームの中でいちばん弱いですね?」
みんなは言い返せずにむっとしている。
武田先生は続ける。
「どのチームも公式戦で当たったならとても厄介な相手。
彼らをただの”敵”とみるのか
それとも技を吸収すべき『師』とみるのか。
君たちが弱いということは伸び代があるということ。
こんな楽しみなことないでしょう。」
そう、武田先生に言われたみんなの顔はただ、悔しいと思う顔ではなかった。
悔しさの中にもっと強くなりたいという闘志が見えたような気がした。
この時私は確信した。
烏野は伸びる。
きっと、夏が過ぎたら
もっともっと強くなっている。
そう、思ったんだ。