第1章 あなたのコンプレックス。
「渚ー!」
あたしの後ろを歩く、優しい自慢の彼氏を振り返り手を振る。
「ちょっと待って、速いよ」
呆れたような笑みを浮かべながらも走って隣まで来てくれる優しい心の持ち主。
「なーぎさ」
どうしようもなく抱き着きたくなって後ろから渚を抱き込んだ。
「うわ…ちょっといきなり抱き着かないでよ」
「渚…」
「もう、どうしたの?」
「あたしのこと…嫌いになる?」
「何訳の分かんないこと言ってるの?
なる訳ないよ。
沙織こそ僕のこと嫌いになるんじゃないの?」
「あたしが?どうして?」
渚のこと、こんなに好きなのに。
なんであたしが嫌いになるの?
「だってほら…僕、背低いし…」
気まずそうにボソッと呟いた。
「はぃ?」
「だって…だってだよ?
彼女より…沙織より小さいなんて恥ずかしいじゃん。
沙織だって背の高い方が好きでしょ?」
心配そうに恐る恐る尋ねる。