第3章 交わった2人のコンプレックス。
「ところでさ、沙織」
「うん?」
改まってどうかしたのかな。
そんな呑気なことを考えていると一瞬にして景色が反転した。
「え…?」
目の前にはすっかりオトコの顔をした渚と、高い高い天井。
「胸が小さいのが嫌なら、僕が一生かけて育ててあげるから」
ニッコリ笑うと少し強引に口づけた。
「んっ…ん」
いつも優しい彼なだけに、この強引さにときめいてる自分も居た。
「口開けて」
渚に言われるがまま口を開けると、スルリと生暖かい舌が入って来た。
「ぅ…ん…」
その舌はあたしの舌を見つけると、追いかけ、捕まえ、決して離さなかった。
「んっ…ふっ…」
激しい口づけに呼吸の限界が近くなり、渚の制服をキュッと掴んだ。
「ん…ふぁ…」
それに気づいた渚はゆっくりと唇を離し、あたしの顔を見つめた。
「沙織のその顔好き」
唾液で濡れる唇を舌で拭うと、そう言った。
あたしの口端には飲み切れなかった渚の唾液が、ツー…と伝っている。