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【ハイキュー】ウシワカイモウト第二部

第46章 ・年越し


「年が明けたら」
「はい。」
「バレー部の皆と初詣に行く。」
「いってらっしゃいませ。私も文芸部の皆と行きます。」
「そうか。鉢合わせるかもしれないな。」
「鉢合わせたらちょっと大変かもしれません。」
「何がだ。」
「天童さんとうちの部長が悪乗りして混沌とした事になりそうな気がします。」
「それで言うならお前が売られた喧嘩を買う危険の方が高いな。」
「何て事っ。」
「冗談だ。」
「兄様、それは洒落にならないと言います。」
「そうか。相変わらずユーモアは難しい。」
「もう。」
「それより当日はくれぐれも体を冷やさないようにしろ。」
「はい。」
「文芸部の連中と離れないようにするのも肝要だ。」
「あの、兄様。」
「人が多い中だ、お前を拐(かどわ)かそうとする輩が出ても不思議ではない。」
「むしろ人が私を気にする余裕などあるでしょうか。」
「人目を惹く娘は注意するに越した事はない。」
「兄様こそ、女性ファンの方に囲まれてしまわないよう気をつけてくださいね。」
「他の娘には興味がないといつも言っているが。」
「嬉しいのですが聞いてて気恥ずかしいです。」
「何故だ。」
「そういうものです。」
「そうか。」

突っ込み不在のボケボケな会話は何とか落ち着いた。


そうして夜、除夜の鐘が聞こえる。
母と祖母と息子と娘が年越し蕎麦をたぐっている。静かに食する音だけが響く中ふと若利は細く長く伸びる麺を見つめ、次に隣に座る文緒を見る。

「どうされました。」

不思議そうにする文緒に若利はいやとだけ呟くが内心は違う。

どうか文緒にはこれからも長く生きて欲しい。帰れば必ず微笑んで迎えてくれる、そんな日常がずっと続いて欲しい。
それはきっとどれだけ年を経ても途切れる事のない願い、長く続いていく願いだ。

「兄様。」

再び不思議そうにする文緒に若利はごく微かに笑いかけた。

「伸びるぞ。」
「兄様こそ。」
「そうだったか。」
「今日の兄様はその、何だか」
「言ってみろ。」
「変です。」

蕎麦を食しながら文緒はぽつりと言う。

「そうかもしれない。」

若利は気を悪くする事なく返した。

「少し感傷的になっているようだ。」
「珍しいですね。」
「そういう事もある。」
「そうですか。」
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