第6章 ・お出かけしましょ
その日の放課後、牛島文緒は文芸部仲間からとある事を聞かれていた。
「え、デート。兄様と。」
つい聞き返すと仲間はうんうんと頷き文緒はうーんと考える。文芸部員達はほんの少し沈黙した。
「したことない。」
やがて文緒はポツと呟き、途端に文芸部員はええええと大騒ぎになる。
「いわゆるデートがどんなのかよくわからないけど、少なくとも普段の買い物とかどうしてもの用事以外で兄様と一緒におでかけした事がない。」
更に言う文緒に文芸部の連中は何たることだ、あれだけ旦那が溺愛して熱々の夫婦仲なのにデートしたことがないなんてなどと言いたい放題言い出すが当の本人は困惑するしかない。
何せ義兄の若利は基本的にバレー部の練習で不在がちだし、たまに休日で家にいてもトレーニングに励むか合間に文緒を膝に乗せて愛でるくらいしかしないのだ。文緒があまり外に出ないタチな上、兄様もお疲れだろうからといちいち言わないのもまた一因である。
ともあれ文芸部員達はこれを一大事と判断した。口々にそれは良くない、何とかしろと言う。
「そういう物なの。」
文緒は困ったまま創作小説のSNS関係で仲良くなった友に尋ねる。友もまた他の部員達と同じようにうんうんと強く主張した。
「でもどうしたらいいのかな。」
友は言った、どこか行きたいとこを決めて旦那を誘えばいいと。
「そっか、自分から言わないといけないよね。」
文緒は呟く。
「でも旦那じゃないから。」
頑張って突っ込みを入れるとまだ言うかこの幼妻と返されてしまった。
「2つ3つしか違わないもん。」
だが友人始め文芸部員達は言った、どうせ牛島(先輩)は嫁にする気満々だと。
「部長まで一緒になって、もう何て事。」
ぷうと膨れる文緒だが文芸部員達にヨシヨシされて結局遊ばれるのであった。