第1章 ・始まり、再
宮城の白鳥沢学園高校、ポテポテと廊下を歩く1人の少女がいる。一応高校の生徒なのだろうが言われなかったら中学の生徒と間違えられそうだ。そんな少女は校内で有名人なのか通りすがりの連中があ、あいつといった様子でチラチラ見たりコソコソ話したりしている。慣れているのか少女は聞こえなかったのように静かにしかし堂々と歩き続けていた。しかし別の誰かがボソリと言った一言に少女は脊椎反射よろしく反応した。
「私はロリ嫁じゃありませんっ。」
顔を真っ赤にして声を上げる少女にしかし言った方はいやどう見てもロリだし嫁だからと片手をパタパタさせて返したのだった。
そんな少女は名を牛島文緒と言い、何と高校バレーボール界の有名人でこの学校の3年である牛島若利の義妹であった。ちょっと聞いただけではどういった事情でそういう関係なのかわからない事を含めて彼女の詳細を知りたいのなら某日昼休み、白鳥沢学園高校中庭で交わされた以下の会話が参考になるだろう。
「お名前は。」
「牛島文緒です。」
「学校とか歳とか学年とか。あと入ってる部活ね。」
「白鳥沢学園高校1年4組、15歳です。文芸部に途中入部しました。」
「家族構成は。」
「義理の母と祖母と兄です。兄は3年の牛島若利です。」
「何で皆義理の、なの。」
「私は両親を亡くして遠い親戚である牛島の家に引き取られたからです。」
「前は何て苗字だったの。」
「申し訳ありません、それは名乗ってはいけないと言われています。」
「変なの。それで義理のかーちゃん達とはうまくやってんの。」
「お陰様で。」
「若利君とはどうなのかな。」
「最初は兄様に関心を持ってもらえませんでしたが、今は大事にしてもらってます。ただ、その、ちょくちょく過保護なのが気になります。」
「じゃあ最近の悩みは。」
「兄様の天然ぶりと他所からロリータ呼ばわりされることです。」
「自分の事はどう思ってるの。」
「弱い人間だと思ってます。あと、兄様はともかく私は天然ボケではありません。」
「自己評価に突っ込みたい所があるんだけど今はまあいいや、他に趣味とか。」
「読書が好きです、SNSでの創作小説も読んでいます。生みの母にもらった人形を飾るのも好きです。西洋の児童文学や児童向けの映像にも興味があります。」