第4章 ・ハヤシライス
「何故か急にそうしたいと思った。」
「しょうがない方ですね。」
「それと忘れる所だった。」
「何でしょう。」
「また作ってくれ。」
文緒はキョトンとした顔をしたがすぐにはい、と笑って返事をし、もう一度体を伸ばして若利に抱きついてきた。
「若利、何か機嫌いいな。」
次の日の朝、部室にて大平が言う。
「昨日の夕飯が好物だった。」
若利は短く答え、大平はすぐああと察したようだった。
「ハヤシライスか、良かったな。」
「ああ。」
「へー、母ちゃんが作ってくれたの。」
口を挟むのは天童である。
「いや、文緒が。」
「マジで。頑張るねぇ、文緒ちゃん。」
「あいつらしいわ。」
瀬見がボソリと呟き、ニヤニヤと見てきた天童を睨むが睨まれた当人はまったく怯んでいない。
「いいねー、家帰ったら可愛いロリ嫁がご飯作って待っててくれてるとかさ。」
「ああ。だがまだ嫁じゃない。」
「末長く爆発しろ。」
「何を言っている。」
「天童やめろ、若利にその手の用語は通じねーから。」
「通じたら怖い気もしますけどね。」
川西が言うと白布がそれは同意すると呟く。一方でう、ぐと唸る声が聞こえる。五色だ。
「工は何唸ってんのー。」
「また何か違う方向のこと考えてねーか。」
やーな予感しかしねぇわと言いたげな瀬見に五色はべ、別にと言う。
「いつも文緒が台所に立ってる所が想像しにくいと思っただけです。」
「まず何で想像しようとしてみたんだよ。」
「だってあいつ物取る時とか手ぇ届くのかなって。」
「凄まじく失礼だなっ。」
「踏み台を使っている。俺がいる時なら取ってやっているが。」
「若利、真面目に答えるトコじゃねーぞ。」
山形が冷や汗かきながら突っ込んだ。
次章に続く