第24章 ・海へ行く話 その5
その後しばらくはわりと平和で野郎共は交代しつつ荷物番、文緒は時折休憩がてら当番の奴と一緒に荷物番をしながら泳いだりビーチボールを投げ合ったりしながら楽しんでいた。文緒としてはここまでの間に何で妙な事が入っちゃったんだろうと不思議である。
「うんまぁ溺愛されてるからだろうな。」
荷物番で来た大平が苦笑した。
「愛されているのはわかります、でもどうしてとはよく思います。」
「それは俺じゃ余計にわからないところだけど」
大平は言ってわいわいやっている仲間の方に目をやる。
「文緒さんはそのままな所がいいんだけどその分放っておけないのかも。」
「そうでしょうか。」
文緒は首を傾げてでかい上着の中でモゾモゾする。いうまでもないかもしれないが若利がまた自分の上着を着せたのである。これを素でやるんだもんなと大平に思われている事など勿論気づいていない。
「それより皆さんにご迷惑をおかけしているのが何とも言えない気持ちです。」
「若利も頑固だからね。」
「困ったものです。」
文緒の場合兄の事を言えない訳だが大平は敢えて突っ込まなかった。大人の対応である。
「いやはや無関心がひどいって若利に注意してたのが懐かしいくらいだな。」
「その節は本当にお世話になりました。きっと私1人ではどうにもならなかったと思います。」
文緒は呟いてまた海の方に目をやる。どうやら向こうの方で天童が瀬見におっかけられているようだ。余計な事でも言ったのだろうか。
「何だか支えられてばかりな気もしますが。」
「気にしすぎは良くないぞ。俺は勿論他のみんなも多分好きでやってるから。」
「恐れ入ります。あら。」
気づけばまた義兄の若利がノシノシとやってきていた。天童もいる。交代らしい。