第22章 ・海へ行く話 その3

そして文緒は野郎共に歓迎された。

「やー、来たねー。」

天童が言い川西が続く。

「あれ、きりんさんの浮き輪とかいらないの。」
「川西さん、私を一体何だと。」
「泳げないんだろ。それに似合うと思って。」
「次から持ってこよう。」
「あの兄様。」
「紐付きが良いだろうか。」
「真面目に検討なさらないでくださ」

話している途中でバシャアッと後ろから水がかかり文緒はそちらを振り向いた。

「あーっ。」
「だから言ったろーが工っ、そこでいきなしバシャバシャやんなって。」
「ど、どーせ濡れるんだから一緒です瀬見さんっ。」
「驚かしてやんなっつってんだよっ。」

しかし瀬見が言い終わった直後に報復措置が行われる。

「うわっ。」

たちまちのうちに文緒と五色の水かけ合戦が始まった。

「やったな文緒っ。おらっ。」
「えいっ。」
「このっ。」
「やったなっ。」
「お前こそっ。」

わりとでかい野郎と年齢不詳の少女がバシャバシャやり合う姿はかなり不思議な図である。実年齢を考えると余計である。

「お前の嫁ホント売られた喧嘩すぐ買うな。」

やり合う2人を見て山形が言い若利はそう思うかと呟く。

「少々心配な時がある。1人で突進しかねない。それとまだ嫁じゃない。」
「そこは絶対抜かさねーのな。つかさ、」
「文緒っ、ちっとは加減しろっ。」
「五色君なら平気でしょ。」
「何だとっ。」
「あいつらクラスじゃいつもあんな感じなんか。」
「見た事がないからわからない。だが可能性は高い。」

そんな会話の間も文緒と五色は止まらずそれを天童と瀬見も眺めている。

「あはは、おもしろー。」
「何気に工の前でも文緒は素だよな。」
「やっぱタメだからなんでない。」
「それもそうか。」
「とはいえずっとあのままじゃねえ。」

ここで天童が悪い笑顔をしたので瀬見はハッとした。

「あっ、このやろっ。」

言うももう遅い。面白がった天童が持っていたビーチボールを投げ込む。そしてそれは案の定火に油を注ぐ結果となった。