第20章 グレイ scene2
今日も、電話。
明日も、電話。
最近忙しくて、会えない日々が続いていた。
言葉にはしないけど、その声はとても寂しそうで。
仕事が終わって、家に帰る深夜。
今すぐ飛んでいきたい衝動に駆られる。
だけど、お互いの明日のことを考えたらそれはできなくて。
ぎゅっと握った拳を噛んで、それに耐えた。
やっと会えたレギュラーの収録日。
だけど、皆の前で抱きつくこともできず。
ただ隣りに座って、微笑んでる和也を見つめている。
「…なに?翔ちゃん…」
「ん…?なんでもねえよ…」
ソファに座りながら、皆に見えないようにそっと手を繋いだ。
和也が凭れてきて、俺の耳元で囁いた。
「今日、家行っていい?」
「ただいまー!」
和也が先に部屋に入っていく。
それを笑いながら見つめていると、会えなかった時間があっという間に埋まっていくようだった。
「翔ちゃん」
手を差し出された。
靴を脱いで手を握ると、和也は鼻歌を歌いながらリビングに入っていく。
「こんな距離なのに手を繋ぎたかったの?」
「うん。翔ちゃんと手を繋いで歩きたかった」
ふふっと笑って俺を振り返った。