第20章 グレイ scene2
「大野さん…?」
大野さんは真っ赤になって俯いた。
「ねえ…顔見せて…?」
困った顔をして、ゆっくりと俺を見た。
「俺、大野さんの嫌がることしないからね…?今日はゆっくり休もうね…」
そう言ってぎゅっと身体を抱きしめた。
「ニノ…」
「だって慣れない現場で大変でしょ?わかるからさ…」
大野さんが俺の身体に腕を回した。
ぎゅうっとしがみつくと、俺の肩口に顔をぎゅっと押し付けた。
「ニノ…?」
「なあに…?」
「お願いがあるんだ…」
大野さんが顔を上げて俺を見た。
「ドラマが終わったら…俺のこと…」
「え?」
「…抱いて?」
俺たちは…結構長いことつきあってるんだけど、まだ身体の関係はなくって。
なんとなく…なんとなくどっちがどっち問題が片付かなくて…
「大野さん…いいの…?」
思わず声が震えてしまった。
「…うん…ごめんね…待たせて…」
「ううん…いいんだよ…」
大野さんの頬を両手で包んだ。
「ありがとう…智…」
大野さんの目が驚きで見開かれて。
その後大粒の涙を零した。
「…和也…」
嗚咽の合間に聞こえてきた、俺の名前を呼ぶ声を、俺は一生忘れないだろう。
その後俺たちは抱き合ったままソファで眠った。
重なりあった身体が一つになっていくようだった。
大野さんの寝顔を見ながら、俺は胸がいっぱいになる。
本当に満たされていた。
大野さんの額に、ちゅっとキスを落とした。
「愛してるよ、智…」
【END】