第20章 グレイ scene2
あれから、雅紀は犬になることもなく、他の本物さんに憑かれることもなく。
順調に二人で過ごしていた。
雅紀には新しいレギュラーが決まったりして、増々忙しい日々で。
俺も東日本大震災の取材やなんかで、家でゆっくりすることができていなかった。
メイク室の鏡前で、ボケーっとメイク待ちをしている時、そういえば雅紀とずっと休日を過ごしていないなと思った。
「翔ちゃん、お疲れ!」
雅紀が俺の隣に座った。
「お、お疲れ。早かったね」
「うん!意外と早く終わったんだ。ロケ」
雅紀はマナブのロケをしてから局に入っていた。
…忙しいやつ…
「雅紀、次の休みいつなの?」
「あー…いつだったかなあ?」
「…聞いた俺がばかだった…」
「なんでえっ!?」
「後でマネに聞いとくわ…」
それからメイクさんが来て、二人で同時進行でメイクしてもらった。
終わってから廊下を歩いていたら、急に雅紀が立ち止まった。
「どうした?雅紀」
「ん…なんか…この先、行きたくない…」
「えっ…だって、楽屋帰れねーぞ?」
「だって…嫌なんだもん…」
怯えてる…もしかして、出たか?
本物さん。