第20章 グレイ scene2
…もう、いつも無理ばっかりしちゃってさ…
そんな無理するくらいなら、俺のこと見てよ。
あの夢の中の高校の先生みたいに…
俺のこと考えて泣いててよ。
身体ん中、俺で一杯にしてよ…
準備を終えて、事務所の車で移動する。
今日は斗真も居るからとても窮屈だ。
「わーすっげ。なんかジュニア時代思い出すね!」
斗真が異様にはしゃいでて。
潤の隣から後ろを振り返ってニコニコしてる。
「翔ちゃん、大丈夫?寄りかかってなよ」
相葉さんが翔さんに声かけてる。
…なんだよ…もう…
「サクショー無理すんなよ?」
「てめ、斗真!」
「うわー!翔ちゃん怒った!」
斗真が笑って、皆笑い出す。
「大丈夫だって、大事とってるだけだから…ほとんど治ってるんだよ?」
「翔ちゃん、でも鼻声…」
大野さんが俺の隣から突っ込んでる。
「大丈夫だって」
そう言って笑う翔さんを、みんな笑いながら見つめてる。
…もう…しょうがないなあ。
車を降りるとき、翔さんがコケて。
地面に手をついたから、慌てて抱き起こした。
「大丈夫?」
「靴紐踏んじまった…」
見ると、スニーカーの紐が解けてた。
結び直してあげて顔をあげたら、手を舐めてる。
「どうしたの?」
「ちょっと擦りむいた」
「見せて?」
手を見たら、血が出ていた。
思わず…
かぶりついちゃった。
「ちょっ…ニノ…」
「あっ…」
ぱっと身体を離して回りをみたら、誰も居なかった。
ほっとして、居酒屋のドアをくぐった。