第17章 ショコラ scene2
黒のやりたいことは、またあの人達と遊ぶことだったのだ。
あの7人が処刑されてまもなく、黒も巣鴨プリズンで死んだ。
だがあの7人の御霊は巣鴨プリズンに留まることなく、皇居の昭和天皇の回りにいたのだ。
黒にはそんなことはわからないから、ずっとあの辺りを彷徨っていたのだとか。
「そこを相葉ちゃんが拾ったんだねえ…」
智くんがコーヒーを啜りながら、雅紀を見る。
「良かったね…犬助けできて」
「犬助け…」
どういう波長か、雅紀に合って雅紀の身体に入ってしまった黒は成仏よりも、好きな人たちのそばにいることを選んだ。
「それが黒の望みだったのですから、私も祓えませんでした…」
先生は湯のみを持って苦笑いする。
「…ということはあの7名の方々も成仏は願ってないってことですか…」
「そうですね…でも…」
「でも?」
「ふふ…私もあんなの初めてみましたけどね…」
あの突風が吹いた瞬間、鳥居の奥から大きくてとても清浄な光が辺りを包んだのだそうだ。
「あっ!それ、俺も見た!あれなんだろう…」
先生は俺の顔を見て、にこりと笑った。
「もしかして墓の主ですか?」
「そうでしょうね。私はそう思いました」