第17章 ショコラ scene2
先生は八王子にある、昭和天皇の御陵に行ってみたらどうかと仰った。
「ごりょう?」
「うん。お墓」
「なんで?」
「んとね。A級戦犯と呼ばれる人たちって、終戦の時昭和天皇のお側近くにお仕えしてたひとばかりなんだ。だから、もしかしたら御霊が集まってるかもって、先生が」
念のため先生はサンシャイン横の公園に行ってみたそうだけど、いわゆるA級の人たちの霊魂はそこにはいなかったそうだ。
「ま、あんな広いところだから居てもわかんないかもしれないけどね」
「そっかぁ…そんなに皆、昭和天皇のこと好きだったんだね…」
「そうだねえ…好きっていうのとはまた違うかもしれないけどさ…」
日本という国の舵取りをしていた人たちで、昭和天皇はその代表で。
大変な時代を生き抜いた人たちで。
その人達の汗があるから、俺たちは生きていられるわけであって。
「感謝しないとな」
「うん!」
そう言って雅紀は俺の腕に絡みついた。
「運転しにくい」
「だって感謝してるんだもん」
「誰に?」
「翔ちゃん!」
んもう…かわいいんだから…
って、鼻の下を伸ばしてる場合じゃない。
明日は、八王子だ。
とりあえず今日は、予定の残りをこなすことにした。