• テキストサイズ

カラフルⅡ【気象系BL小説】

第12章 退紅(あらそめ)scene2


「なるほど…全部抜けてるのね…」


事務所から離れたところにあるスタジオの一室。


事務所で貸しきって、リハーサルに使っているビルに呼び出された。


女性幹部はタバコを指に挟んだまま、眉間を押さえた。


「表に出す気はないみたいです…」


「金、ね…」


男の名刺をひらひらさせて、なにかを思案している。


「一度払うと、どこまでも…」


「そうね…何度もあるからねそういうこと…」


煙を吸い込むと、細く細く吐き出した。


「櫻井…」


「はい」


「ごめんね…」


その響きは、母のようで。


「後はこっちでケリつけるから」







これを表に出さないために、あのスキャンダルを世に出したのに…


これじゃ…傷つき損…


ちょっと笑えてくる。


帰りの車内で、一人笑いを噛み殺す。


ひとしきり笑ったら、笑うことができなくなった。


負の連鎖…


もしかして、それに嵌まろうとしているのかもしれない。


でも守らなきゃいけない。


俺は、智くんを守るって決めたんだ。


バックミラーに写る、自分の顔が青白くてびっくりした。


目の暗さが…井戸の底を思わせた。

/ 1015ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp