第10章 チャイニーズ・ローズ
「いい家だろ?」
翔くんが、キッチンからマグカップを持って出てきた。
「おはよう。潤」
「翔くん…どういうこと…?」
「だから…取引だよ」
「え…?」
「ここで、俺もお前も彼女も…一緒に住むんだよ」
「な…に…?」
「いいだろ…これで。彼女はお前に振られたことがバレないし、なんだったらこのまま結婚すればいい」
翔くんはテーブルにコーヒーの入ったマグカップを置いた。
「俺たちだって、彼女にバラされることもなければ、引き離されることもない。取引だよ」
コクリと翔くんがコーヒーを一口、飲んだ。
彼女はにこにこ微笑んでる。
俺は身体に力が入らなかった。
…そんな…酷い…翔くん…
翔くんが俺に向かって歩いてくる。
そっと俺の肩を持つと、耳元で囁いた。
「この家で、彼女に手ぇだしたらぶっ殺すぞ…」
驚いて見つめ返す俺に向かって、翔くんは冷たく微笑んだ。
「潤…愛してるよ…」
ぐらっと床が揺れた気がした。
【END】