第10章 チャイニーズ・ローズ
「ああ…うん…今日は遅くなるから。行けないわ…うん…」
楽屋で電話してると、メンバーがどんどん帰っていく。
俺はまだ撮りが残ってるから、このまま待機。
「松潤、お先ー」
小声で言っていくメンバーに手を振りながら、電話を切った。
「お疲れー」
ふと見ると、ソファにまだ翔くんが居て。
「あれ?帰らないの?」
「ああ、俺まだ打ち合わせ残ってて」
「そうなんだ。楽屋、このまま使うの?」
「うん。潤がよければ」
「いいよ。別に。俺、これから出るし」
「…さっきの、彼女?」
「え?うん…」
あんまり普段、メンバーは単刀直入には聞いてこない。
だから、このときの翔くんの質問には戸惑った。
「ふうん…相変わらず、うまくやってんだ」
「まあね…」
「じゃあ、あれ、マジなの?結婚って…」
「え?」
「なんか、報道されてんじゃん」
「そんな話もでてるけどね…」
「ふうん…」
翔くんの目が、俺を責めるように見てる。
「なに…?なんかいけない?」
「別に…」
翔くんはまた新聞に目を戻した。
気まずい空気が流れて、俺は楽屋を出た。
背後に、ぽつりと翔くんの声が聞こえた。
「赦さない…」