第1章 Umbrella【1】
その日は授業なんてしないで、をいじめていた女子たちをみんなのいる前で何をしたかを全部吐かされていた。
「そんなことしていない」
「証拠はあるの」
「あの子の被害妄想じゃないの」
言い訳を繰り返して、自分たちの非を認めようとしない女子たち。
俺は静かな怒りを彼女たちにぶつける。
あの日観た光景を事細かに先生に、みんなに伝える。
女子たちの顔がみるみるうちに青くなっていく。
「言葉ってナイフみたいだよな。一度傷つけてしまったら一生消えないんだ。どんなに消そうと思っても消えないんだ。そんな傷を俺達はに刻み付けて来たんだ」
込み上げてくる涙を必死に抑えた。
俺に泣く資格なんてない。
俺が傷つけた。
伸ばされたSOSをいとも簡単に振り払ったんだ。
先生は大きくため息を吐いて、俺達に長い長い説教をした。
先生には悪いけど、先生の声なんてまったくもって聞こえなくて、ただ一人雨の音を聞いていた。
放課後。
いつも通りの帰り道。
傘を開いて隣を見るがそこに彼女はいない。
当たり前だ。
彼女は転校したんだ。
ぱしゃんと水たまりを踏む。
彼女と歩いた帰り道を一人で歩く。
赤色タイルを見つけた。
赤色のタイルだけを踏んで、すぐにやめた。
全然楽しくない。
マンホールの上に立った。
くるりくるくると踊る彼女の姿はどこにもなくて。
必死に抑えていたものが一気に溢れ出す。
俺は傘を投げ捨てた。
その場で声を出して泣いた。
大粒の涙が頬を伝うのがわかる。
ここに、この場所に、俺の隣に、君がいないってだけで、どうしてこんなにも景色が滲んで見えるのだろう。
俺は、ずっと泣き続けた。
子供のように、ずっとずっと。
Umbrella【1】終