第22章 夢と現実
天音side…
******
目を開けて、その視界に広がるのは、懐かしい景色。
私が住み慣れた街。
そこは、江戸では無く、かつて私が居た街。
『私は…どうして…こんなのって……。』
最後に見たのは目に涙を浮かべる新八君も神楽ちゃん。
そして、私の想い人、銀さん。
どうして私はこんな所に立っているのだろう。
私は自分の家ではなく、よく通っていた道。見ればみるほど、私の心は絶望感で溢れて行く。
これが、現実…?
……そうなのかもしれない。私はきっと逃げていたんだ。
自分が置かれている現実から目を背ける為に、自分の都合の良い世界を作り出していたんだ。
そもそも現実から違う世代になんて、そんなの有り得ない。
新八君も神楽ちゃんも、そして銀さんも、私が私の為に作り出した夢の中の登場人物に過ぎないんだ。
……でもどうしてこんなにも胸が締め付けられるのだろう。
どうしてこんなにも、もう一度会いたいと、思ってしまうのだろう。
『ダメ…もう目を背けちゃ…。』
私はその場に座り込み手で顔を覆い涙を隠す。道行く人は私の事など見えていないかのように見向きもせず横を通り過ぎて行く。その状況に耐えられなくなり肩が震える。
『やだ…やだよ…一人はもう…銀さん…皆…っ!』
現実逃避などそんな事はしても無駄と分かっていても、私の中に残る優しい記憶が私の弱い心を蝕む。
気が付けば車が走る音も、人が話す声も、街の声も何も聞こえなくなっていた。恐る恐る目を開けてみれば辺りは白一色に染まっていた。そして何処からか聞こえてくる懐かしい声。
―目を覚ましなさい、迷ってはダメ。―
―帰りたいと思う所に帰りなさい。それがお前の居場所だ。―
それは私が幼い頃に聞いた父と母の声。姿は見えない、だけど私は無我夢中で声のする方へと走っていた。
もう一度会いたいと思う人たちに会うために。