第20章 お菓子は目分量で作ってはいけない
何も知らないお妙だったが、今の様子を見て天音の心中を確実に察した。
お妙「そっか、天音ちゃん銀さんの事が好きなのね。」
『っ!?』
お妙の突然の言葉に俯いていた顔が勢い良く上がる。顔を上げた先に見えるお妙の顔は慈顔に満ちた表情だった。何故分かったのかと言わんばかりの驚いた顔でお妙を見れば、クスクスと口元を抑え遠慮しがちに笑った。
『な、なんで、私何も言ってないのに…』
お妙「そんなの見てれば分かるわよ。どうでもいい男にそんな事言われてもそこまで落ち込む人なんか居るわけないもの。」
天音は銀時への気持ちを神楽にバレた時よりも遥かに恥ずかしさを感じ、お妙から目を逸らし顔を赤らめた。こんな顔もするのかと思うとお妙は天音が可愛くて仕方なかった。そして何よりも、恋愛というものがどういうものかを身をもって感じてくれたことが嬉しかった。いつの日か天音が相談した事がようやく解決した事に、お妙は喜びを隠せなかった。
お妙「もう何よ焦れったいわね、両思いなんだからさっさと告白しちゃえばいいのに。」
『そっ、そんな事いきなり無理ですって!…そこでお妙さんにまた相談があるんですけど…。』
お妙「何かしら?私に出来る事なら何でもやるわ。」
『二月十四日…バレンタインの日までここに置いてもらえる事、出来ますか…?』
日にちが開けば開くほど帰りずらくなる事は天音も重々承知だった。だが銀時の居るあの家でお菓子を作る事はどうしても嫌だった。それは何も言わず謝罪と告白を兼ねて渡したかったからだった。