第19章 男の嫉妬ほど見苦しいものは無い
足を進めれば進めるほど人通りが少なくなって行く。こんな所にご飯を食べる所なんてあるのだろうか。…もしかして本当にヤバイ人だった!?段々不安になってきた私は恐る恐る前を歩く高杉さんに声をかけた。
『あのー…何処に向かってるんですか…?』
高杉「直に着く。まあそんな警戒してくれるな。」
そう言ってそれ以上は何も教えてくれないまま私達の動く足は止まらない。そしてようやく足が止まったと思えば目の前に映るのは海だった。
『あの……海なんですけど………。』
高杉「あれだ。」
『え??ど、どれですか?』
高杉さんの視線を追い掛けるとそこには海辺にポツリと浮かぶ船が一隻。屋形船という物だろうか。あんな所でご飯とはえらくリッチな生活を送っているなと思う反面、リッチ=御高い という方程式が私の脳内で成立され反射的に断っていた。
『え、いやいや、さすがにダメですよあんな所でご飯なんて!絶対高いじゃないですか!』
高杉「なァに、気にする事はねェ。あれは俺の船だ。」
『あ、そうなんですね、それなら良いですね。……て、はぁ!?高杉さん船とか持ってるんですか!?』
私がひたすら驚いていると高杉さんはフッと薄く笑い海辺へと足を運ぶ。船はそれを見つけたかの様にゆっくりとこちらへ向かって来て私達の前で止まった。
高杉「どうした?入らねェのか?」
『いや、ちょっと衝撃過ぎて身体が硬直してます。』
高杉「手を貸してやる、さっさと乗れ。」
『あっちょっ、こ、こわっ!!』
腕を引かれた私は安定していた地上からふ不安定な船の上へと足を踏み入れた。