第19章 男の嫉妬ほど見苦しいものは無い
名前も分からないそれを見て一瞬落とし主の事を思い出す。でも同じ物を持ってるなんて事は別におかしな事でも無いし、あの人だとは限らない。それに一回落とした物なら普通気を付けるよね、なんて思いながらそれを拾い上げ顔を上げた。でも其処にいたのはあの時と同じ後ろ姿だった。
『もう…また落としてる……あのちょっとすいません!!』
落とした事に気付いていないのか、どんどん背中が遠ざかって行く。私は小言を言いながらその人を呼び止めた。でも自分の事だと分かっていないのか全然振り返ってくれない。結局私は走ってその人の元へと落とし物を届けた。
『あの!これ、また落としてますよ!!』
高杉「…フッ、名前を呼べば早いものを。」
私の声にようやく気付き動いていた足は止まりその人は振り返りそう言った。普通なら感謝される筈なのに、何故か鼻で笑われて馬鹿にされた。
何よ!人が二度も拾ってあげたっていうのに!
『もう!同じ物を二回も落とすなんて気を付けないとダメですよ。』
高杉「久々に顔を合わして早々説教とはおもしろい奴だ。」
『お、おもしろいってなんですか…元はと言えばあなたが…』
高杉「あなたじゃない、高杉だ。」
『あ、はい……。』
なんか桂さんみたいな言い回し。そして私を馬鹿にしたことは撤回してくれないのね…。