第52章 嵐 コンサート 中盤
二宮視点
〝Believe〟を歌い出すため一歩前に踏み出す。
『 It's brand new world 』
胸に激痛が走る。
「ぁっぅ」
声が漏れないように飲み込んだ。
幸い 俺たちを照らしていた照明が消え 現場の明るさだから俺の顔の表情は認識されにくいだろう。
(くっ苦しいな)
この曲は歌い出しまでのダンスが長い 胸の苦しみを我慢して踊り続ける。
O&S『 どこまで行っても 追い越せない 』
歌唱が始まった。
(これは 攻撃だな)
多種多様な色合いだったはずの衣が色が抜けていく
(俺の力が削れていく…)
S&A『 時が流れていっても 消えはしない 』
A&M『 さあ どこまで行ったら 辿り着くの? 』
(このまま器に影響が出たら)
考えを纏める間もなく自分の歌唱が回って来た。
『 遠い日の記憶 』
潤くんの声に寄り掛かって歌う。
(仕方ない… 宴に みんなに 迷惑を掛けちゃいけない)
≪オート≫
器に嵐モードで動くように言霊をかける。
(これで霊的攻撃は俺の意識体に向くはず)
『 夜明ける頃 空見れば
輝いていた It's a brand new world 』
器はきちんと覚えたタイミングで歌い踊っているのを確認する。
(ごめんね すぐ戻ってくるから)
汗いっぱいの四人を見て違う痛みを感じる。
そんな四人にバレないように、小猿の姿に変身して、ステージ下に降りた。
(あんだけの飛天が舞う空から侵入は無理だろ
だったら、侵入口は、人柱を立てにくい場所
俺たちがさっき降り立った、ヘリポートだ)
真っ暗なヘリポート 人がいないから灯りはない。
≪誰やある≫
先に声を出す
{おお 今世のサルが来たか}
(やっぱり誰いた
でも、聞いたことのない声だ…)
{首尾よく進んでおる}
いきなり目の前に現れた爺さんが大きな口を開いて笑った。
「和也さま」
はまぢの こえ?
浜地「なんのために我々がいるとお思いですか?
今、コンサート中ですよ まったく貴方という方は いつもいつも…」
声が震えている?泣いているの?
あれ?おれ…なぜ 浜地に抱き抱えられているんだ?
浜地「さ 体にお戻りください」