第43章 通しリハーサルをしよう
犬養「もろもろのタイムまとめました」
数枚の紙を挟んだバインダーを持ってきた。
「うん…」
(細かいな…)
「これをさ…」
犬養「主なスタッフにはコピー回しています」
「ん さすがだね」
犬養「お褒め ありがとうございます」
「じゃぁ 俺も着替えてくるよ。風邪引いたらシャレになんねーから」
犬養「そうですね、モニターの方には伝えておきます」
頭を下げた犬養の横を通って、セットの裏のコンテナハウスに向かう。
空には、グレーの暗雲
「はー 雲ってるぅ… シカタネーだろ!」
ため息をした俺を、俺が叱る。
階段を下りると、カメラマンが近づくてきた。
カメラマン「遅かったですね。皆さん着替え終わりましたよ」
「あーうん。俺は通リハは、いっつも下で見てるんだ。だから、衣装には着替えないよ」
カメラマン「そうなんですかぁ、じゃ何か取りに来たんですか?」
「濡れてるからさ、着替えに来たんだ。本番に風邪ひいたら大変だからね」
カメラマン「そうですか…じゃ、DVDようのコメントだけ、いただけますか?」
「ああ、いいですよ。
2日目は雨です 一番ちゃんと踊りたい日に踊れない…
しょうがないね」
橋本「お疲れ様です」
扉を開けてくれる橋本マネ。
「お疲れ様です」
横を通って中に入る。
バタンっと扉が閉まる。
「俺一人の時に来るって事は問題ですか?」
振り向くと扉の前に橋本マネが立っていた。
橋本「ヌマウズの発生と排除の報告です」
直立不動の橋本マネが淡々と話す。
「ああ ニノからも聞いた。排除できたんですか?」
橋本「嵐に災い成す者は、引き取ってもらったが、傍観の者にはそうはいきません。一層の配慮を頂きたい」
「“橋本さん”の口からの指示なら、誰もが動きますよ
だって俺たちチームでしょ?」
橋本「『御言葉』頂戴しました」
橋本マネは右手で握った拳を左手の掌でつつんで頭下げ消えた。
(拱手(きょうしゅ)はともかく、消えるって…部外者に気づかれませんように……)