第94章 『声』とメンバーの会話
櫻井視点
この声の主を認識できて、まだそんなに時間が経っていないのに、懐かしさを感じる。
(おかしなもんだな…)
体を声の方に向けようとすると
『 振り向くでない 』
声が俺の動きを制する。
「え? あ はい」
素直に従う。
少しの沈黙。
『 選択の時が近い… 』
沈黙を破ったのは桃木さんの方だった。
(選択?何の?)
質問を言う前に桃木さんは言葉を続ける。
『 サト…を サトシ殿を失う事は得策ではない 』
硬い印象の声が背中側から聞こえる。
(失う!)
「それは どういう 事 ですか?」
『 そう 角立てるでない 』
桃木さんがクスッ笑った。
「あ…すみません」(恥ずかしい)
『 よい 私も同じ気持ちだった 』
「で、どう言うことですか?」
体を動かそうとした時、智くんの‘心配’を感じた。
「あ!桃木さん 今の話はまた後で!」
返事を間もなく、走りだす。
『 我ながら 忙しいなぁ…』
憐れんだ様な笑ったような声が小さく聞こえた。
しゃがんでいる雅紀を心配そうに見下ろしている智くんが見える。
(雅紀になにかあったのか?)
A「えられるの?」
雅紀が立ち上がり元気そうな声が聞こえてきた。
M「もぉ説明して……翔さんの……意味はね…」
潤がニコニコ顔で雅紀に話しをしている。
(得られる?俺の?)
「なに?なんの説明?」
小走りで三人に近づく。
A「あのね!」
雅紀が大きな声で反応してコッチを向く。
(教えてくれるんだ!)
雅紀の方に体を向ける。
(智くんの口も… 動いた気がしたけど…)
A「ダブルで蹴られる訳を…」
M「わーわーわー」
潤が慌てて雅紀の口を押えた。
A「うぅぅ んぅ」
雅紀がもがきながら、抗議たっぷりな目で潤を見ている。
(え?ちょっと なに? どうして 雅紀の口を押えるの?)
智くんの方を向くと、智くんの眉が下がって若干困っていた。
(状況がつかめない…こういう時は…)
「あ!」
ニノの伝言を思い出した。
「潤!」
潤を呼ぶ。
ビクッと体を揺らした潤がカクカク顔を動かして俺を見る。
雅紀と智くんも俺を見る。
(え?なに? 疑問いっぱいだけど)
「ニノがね 来てほしいって」
伝言を口にする。