第69章 詠唱を経て　ご尊顔を拝む

大野視点

｛はじめます｝

　乙女は両手の掌を上に向け、乙女のドレスがフラカヒコの正装に変わっていく。


　“父なる空と　母なる海の”
　詠唱(メレ)を唄い始めると、乙女の手から　あふれ出す霊力


　“間に　生まれし　我が地”

　霊力の周りに　小さき精霊が集まって、周りを囲っていく


　“大地にすべての命の源　種　宿る”


　乙女が一息拭くと、ゆっくり、そして麗しく舞い始める。


　“柔らかな風と　麗しい水に育(はぐく)まれ

　　新たな芽が息吹く　暖かな陽ざし浴び　大きく葉を広げ

　　花を咲かす

　　その花に 輝きが集まる”


　精霊たちも乙女と共に舞っている。


（きれいだ…精霊は　美しい…）
見とれていると、柔らかな輝きは徐々に暗い色へと変わり雷鳴が轟く


　“迷い多くなれば　雷(いかずち)が落ち　葉を凍(こご)わす”

　翔くんが少し肩を降らす。


（寒いの？怖いの？）

　翔くんが身を寄せてきた。

（ああ…寒いんだね…）


翔くんの手を取る。

　翔くんはもう一つの手で和也に向ける。


（ふーん…じゃ　俺は…）
背中に輝きが集まりつつあった雅紀の手を取る。

（手を繋ごうね）

ビックリした顔の雅紀が、太陽のような相葉ちゃんの顔に戻った。




　乙女が微笑を浮かべ、両手を高く伸ばす。


　“その暗明を潜り抜け　共にする手を繋げ”



暗い空間に　一筋の光が俺たちの上に差し込んできた。


　その光は温かい。



光の中に無数の輝きが一つの塊になり、輝く女性のような姿に代わる。



　　大きくなりましたね…


　　mizuとkazeに護られし者

　　すっかり“人”に成長したのですね…



耳を震わす声でなく　頭に直接聞こえる声が響く



　　与えられた定めは…　避けることはできぬ…

　　しかし、ソナタ達は潜り抜けた…




　　十五年の年月は　人の営みでは

　　童より人に成長すると聴く

　　身を清め　正し　そして笑え

　　ソナタ達が流した　汗と涙が

　　新たな『虹』を生む　その虹を渡り　次を見つめよ



「「「「「はい」」」」」」
五人で声を揃えて返事をした。