第1章 レイスの憂鬱
トロイメアの姫君に、目覚めさせてもらってから1週間。
どうやら、アピスも、フォーマも、サキアも、毒薬の国の王子は全員同じようなタイミングで、眠りから目覚めたらしい。
他国からの話を聞いたところ、トロイメアの姫君に目覚めさせてもらった王子の国は、後日姫君を国に招いておもてなしをする、というのが定石なのだと言う。
正直俺は気が進まない。
どうやら俺以外の王子も、トロイメアの姫君に少なからず好意を抱いているし、国としてはあの夢王国トロイメアと親交を深めることができる貴重な機会だ。
色んな思惑が交差して、面倒な事になるのが目に見えている。
どうして俺は、王子なんかに産まれてしまったんだろう。
自分の左腕の刺青を忌々しく見つめる。
この刺青も、王子という肩書きも自分に一生ついてまわるものだと思うと暗澹たる気持ちだ。
それでも。
もう一度、あのトロイメアの姫君には会ってみたい。
俺自身もよく分からないけど、姫にもう1度会ったら何かが変わるかもしれない、そんな気がしているんだ。