【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第8章 ~謙信~
書き上げた書簡を家臣に手渡し、一人になると、ため息をつく。
女中「お茶をお持ちしましょうか」
入れ違いで現れた女中に、必要ないと答え、また部屋に静けさが訪れる。
謙信「・・・」
ふと外を見ると、今日も曇天。
灰色の空を眺めていると、なぜかなおの顔が見たくなった。
ゆるりと立ち上がると、部屋を後にする。
謙信「なお」
部屋を見渡すが、その姿はどこにもなかった。
佐助「謙信様?」
背後から声がかかり、振り返ると、
佐助「なおさんなら、さっき散歩に出かけました」
謙信「散歩・・・」
相変わらず呑気な女だ。
無人の部屋から羽織を取ると、また部屋を出る。
「うー、寒い」
天守台から景色を眺めていたなおは、自分を抱き締めるように腕で身体を包んだ。
ここから見える風景が好きだった。
城下の街並は違えど、その先に見える海や空は元いた時代と変わらない。
戻りたいと思っているわけではないが、何度でも見たくなり、自然と足を運んでしまう場所だった。
謙信「なお」
突然の声に、身構えるように振り向く。
「あ、謙信様」
ほっとした途端、笑みをこぼした。
「どうされたのですか?お仕事は・・・」
謙信「済んだ」
なおに歩み寄ると、持ってきた羽織を肩にかけてやる。
謙信「体を冷やすな」
それだけ言うと、来た道を引き返す。
「えっ、謙信様?」
慌てて追いかけ、謙信の袖を少し掴むと、
「これだけの為に来たんですか?」
謙信「・・・」
「お時間があるなら、少しだけ、歩きませんか?」
見上げるなおの表情に、謙信の胸が僅かに軋む。
気が付けば、なおの肩を抱き寄せていた。