【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第2章 ~幸村´(ダッシュ)~
静かな部屋に、碁石の打音が響く。
顔を上げたなおは、謙信を見つめた後、
「負けました」
頭を下げた。
小さくため息をつくと
謙信「自分で言っていたが、確かに相手にならん。織田信長や石田三成の戦術を垣間見ることもなかったな」
勝てるなんて到底思ってはいなかったが、負ければやはり悔しい。なおは唇を噛んだ。
「緊張もあったので、もう少しリラックス出来れば、もしかしたら少しは・・・」
聞きなれない言葉が混じったが、言っている意味はなおを見ていればわかる。部屋に入ってきた時の顔はやや強張っており、いざ打ち始めると、その指は微かに震えていた。
「習ったことを良く思い出して、また出直してきます」
申し訳なさそうに顔を俯かせる。
そんな顔が見たかったわけではない。
なおとの勝負は意外なほどに楽しかった。
だから、囲碁を習ったという話を聞いたあの日から、密かに考えていたことをなおに提案することにする。
謙信「お前は、安土に戻りたいと思うことはあるか」
「え・・・」
突然の問いになおは顔を上げ、その意図を探ろうとしばし見つめる。
謙信「先日、豊臣秀吉から文が届いただろう。確かその前は伊達政宗、だったか」
謙信の計らいで、自分達にとっては敵対する武将であるにもかかわらず、安土から届く文は、中身を検められる事もなくなおの手元に渡っていた。
「近況報告とか、私の健康を気遣う内容だとか、そういったものでした」
謙信「・・・」
視線を合わせたまま無言でいると、なおは続ける。
「戻りたいと思うことはありません。私の居場所は幸村の隣です。自分で決めて、ここへ来ましたから」
ただ、思い出したり、懐かしんだりすることはある。安土城の皆の顔が浮かび、意識せずなおの瞳が揺れる。
謙信「なお、これからは俺がお前に囲碁を教える」
「え・・・謙信様が、ですか?」
謙信「呼び出しには必ず応じろ。お前には、俺の戦術を全て伝授する」
「・・・はい」
謙信「俺が認めるほどにお前が強くなった、その時には・・・」
微かに微笑みながら、なおに告げる。
謙信「安土に行って、織田信長と勝負して来い」
見事打ち負かして、そして、必ずここに帰って来い。