【イケメン戦国】 戦国武将へのサプライズ<R18>
第2章 ~幸村´(ダッシュ)~
「佐助君、いる?」
なおが声をかけると、目の前の襖が静かに開かれる。
佐助「いらっしゃい。どうぞ」
所定の位置に座布団を敷き、
佐助「今お茶入れる」
「あ、お構いなく」
いつも通りのやり取り。
宴の翌日、約束通りなおは佐助の部屋を訪れていた。
終わりが見えない宴。
とめどなく酒を飲む三人の武将になおが敵うはずもない。静かに酔いまくる佐助が箸を口に咥え、先端にイカの輪切りをぶら下げこちらに差し出してきた時、軽いめまいを覚え、なおは広間から失礼した。
無論、幸村の言っていた「続き」は実現されることなく・・・。
佐助「早速だけど、これ」
目の前に並べられた、小さな二つの容器。シンプルながらも品の良い細工が施され、美しさに目を奪われる。
「わぁ・・・きれい」
佐助「こっちがシャンプーで、こっちがリンス。リンスと言っても、柑橘類を絞った単純なものだけど」
そっと蓋を取り顔を近付けると、ほのかに甘い香りがした。
佐助「失敗続きだったけど、やっと完成して俺も嬉しい。何より、楽しかった」
苦労を重ねた日々に思いを馳せる。
この時代にあるもの、この時代でできることの中から模索し、失敗を繰り返した。
そう、いつだったか・・・
「プッ・・・ふふっ」
佐助「我慢は良くない。笑いたいなら思いっきり笑おう、なおさん」
「アハハ! っ・・・ごめん、思い出してつい、っふふ」
うまくいったようだとの報告を佐助から受け、その日なおは城門の前で帰りを待っていた。
試作品を試すと言い、麓に流れる小川まで髪を洗いに行ったのだ。
空が茜色に染まる頃、遠くに佐助らしき姿を見つける。思わず駆け寄ろうと踏み出すが、異変に気が付いた。
佐助「なおさん、ただいま」
「っ!?」
目を見開き、佐助の頭を凝視する。
爆発コントを思わせる頭髪の乱れように一瞬息を飲み、
「ふ・・・ごめ・・・・ぅ フフ」
佐助「我慢は良くない。どうぞ遠慮なく」
腹を抱えて笑うなおに、佐助も微笑み応える。
佐助「洗浄力は問題ないようだし」
だがもう少し工夫が必要だな。
完成したとき、なおは一体どんな笑顔を見せてくれるだろうか。
想像すると、なぜか胸が甘やかに軋んだ。