第6章 連鎖
「………いらっしゃいませ」
俺は…高鳴る動悸を抑えようと、彼と顔を合わせずに準備をする。
シーツを整えたり…枕の位置を変えたり。
彼の顔が見れない。怖い。
すると、俺の心を見透かされたのか、彼が背後に立ち、後ろから俺を抱き締めた。
「………」
松岡「………翔…」
「………」
松岡「………逢いたかった…」
「………止めて」
松岡「………翔…」
「止めろよ!」
俺は彼の腕を振りほどき、睨みながら振り返った。
松岡「………すまん」
「………」
5年前と変わらない…。
久し振りに見るその姿はやっぱり男前だった。
「………何しに来たの」
松岡「………こっちに戻って来たんだ。それで…お前に逢いたくなって…ここに足が…」
「………」
松岡「変わらないな翔は…」
「………」
松岡「………いや。違うな。綺麗になった…」
「本当に…止めろよ」
松岡「お世辞じゃない。本当に…綺麗になった」
「そう。ありがとう」
俺は彼から顔を反らし、ベッドに腰掛けた。
松岡「舞ちゃん…どう?」
「もう関係ないだろ」
松岡「………すまない」
「………今は安定してる」
俺はうつ向いたまはまぽつりと答えた。
松岡「………そっか。良かった」
「………」
松岡「ずっと…気になってた。お前の事」
「は?何で」
松岡「何でって…知ってるだろ。お前の事愛してたからだよ。あんな終わり方…後悔してる」
「………」
松岡「翔…俺は…」
「安心して。付き合ってる人いるから」
松岡「え…」
「一緒に住んでる。母親にも紹介してくれたんだ。俺には勿体無い位素敵な人だよ。俺今最高に幸せなんだ」
松岡「………そう、か…」
「うん。だから心配してもらう必要ない。大丈夫」
松岡「………」
「っっ…!」
いきなり腕を引っ張られ、その腕の中に抱きすくめられる。
「ま、昌宏さん…」
5年振りに…彼の名前を呼んでしまう。
松岡「………翔…」
「昌宏…さん…」
松岡「翔…」
「ま、さ…」
顎を持ち上げられ、唇を重ねられる。
その瞬間…俺の頭が真っ白になってしまった。