第6章 連鎖
ー翔sideー
雅紀のお母さんに話した。
仕事の事、舞の事。包み隠さず。
お母さんは…何も言わずに俺を抱き締めてくれた。
久し振りに俺は…母親の温かさを感じたんだ。
近い内に俺を連れて実家に行くという約束をした後、お義母さんは帰って行った。
「雅紀」
雅紀「んー?どうしたの?」
「俺の愛した人が…雅紀で良かった」
雅紀「どうしたの急に」
「雅紀って…お義母さんに似てるよね。顔もだけど…優しさも…人としての器の大きさとか」
雅紀「そう?」
「うん。ますます好きになった」
雅紀「んふふ。もっと言って」
「雅紀大好きだよ。愛してる」
雅紀「もーっと。もっと言って?」
「ふふっ。愛してるよ。大好き」
カズ「はぁ…甘過ぎて胸焼けしそうなんすけど」
「え?」
カズ「いや、そりゃね…俺が聞いたんすよ?『最近どうなんすか?』って。良かったじゃないすか。母親公認なんて。でも『愛してるよ雅紀ー』のくだりいります?」
「ごめんて…だってノロケ聞いてくれるのお前しかいないんだもん…」
仕事の休憩中。
俺はカズに雅紀のノロケ話を聞いてもらっていた。
口は悪いけど、結局ちゃんと聞いてくれるこいつが俺は好きだ。
カズ「はいはい。ご馳走様でした」
「まぁ、千葉に行ったらお土産はずむからさ」
カズ「遠慮しませんよ?これまでノロケ聞いた分頂きます」
「こら」
笑い合ってると、店長が中に入って来た。
店長「ショウ。指名だ」
「あ、はい」
カズ「行ってらっしゃい」
俺は立ち上がり、部屋へと向かった。
店長「………ショウ」
「はい?」
扉の前で店長が振り返る。
店長「………」
「どうしたんですか」
店長「………落ち着いて聞けよ?」
「………え?」
店長「………松岡様だ」
「………え…」
店長「………お前が嫌なら…」
「………」
店長「………ショウ…」
「………大丈夫です…」
店長「………分かった」
俺の背中を撫で、店長はその場を離れた。
視界がグラグラする。
………嘘だ。嘘だ。誰か嘘だと言って…。
俺は必死に呼吸を整えながら、震えるその手で扉を開く。
松岡「………翔…」
俺のかつて愛した人が…そこに立っていた。