第5章 家族
「………」
翔「………」
雅紀母「………」
部屋に流れる沈黙。母ちゃんは真っ直ぐに俺の顔を見つめていた。
「………えと…母ちゃん?」
雅紀母「遅いのよ馬鹿」
「は?」
食い気味に言われ、俺と翔はぽかんと母ちゃんを見つめた。
雅紀母「とっくに気付いてるっつーの。全く…親が隣で寝てる時位盛るの止めなさいよ馬鹿息子!」
「………」
翔「………」
………まずい、バレてた。
雅紀母「まぁ…あんたが帰って来る前から何となく気付いてたけどね」
「え?」
雅紀母「当たり前でしょ。寝室ひとつしか無いのに2人で住んでるっておかしいと思ったのよ。案の定普通に一緒に寝てるし。あんたはメロメロな視線を翔くんに送ってるし。爪が甘いのよ」
「す、すみません…」
雅紀母「全く…まさか息子の情事の声聞かされるなんてね」
翔「すみません…」
雅紀母「翔くんは謝らなくていいのよ。雅紀がアホなんだから」
「アホって…いや、本当ごめん隠して…でも…本気なんだ俺達」
雅紀母「………」
「………愛してるんだ。一生側に居たい。だから…認めて下さい」
俺と翔は母ちゃんに頭を下げた。
雅紀母「………翔くん」
翔「………はい…」
翔がゆっくり目を開けた。
雅紀母「………本当にこの子で大丈夫?」
翔「………雅紀さんを愛してます。雅紀さんが居ないと…生きていけません」
雅紀母「………」
翔「お願いします…」
雅紀母「よし!分かった!」
バン、と母ちゃんがテーブルを叩いた。
雅紀母「そこまで言われたら認めざるを得ないわね」
「母ちゃん…いいの?」
あっさりと認めてくれた母ちゃんに驚いてしまった。
雅紀母「何よ。反対して欲しかった訳?」
「ち、違うけど…でも…簡単にはいかないって思ってたから拍子抜けして…」
雅紀母「まぁね…勘付いた時は驚いたし焦ったわよ。でもね…あんたは人を見る目があるわ。そういう風に教育したもの。そのあんたが選んだ人だからね。間違いないわよ」
「母ちゃん…」
翔「………ありがとう…ございます…」
雅紀母「雅紀を宜しくね。翔くん」
母ちゃんはにっこりと微笑みながら涙を流す翔に微笑んだ。