第4章 ショウの秘密
「ははっ…何言ってんの…」
カズの放った言葉に俺はただ笑うしかない。
「客好きになるなんて…ある訳ないじゃん」
カズ「でも俺にはそう見えますけどね」
「………」
カズ「別に良いんじゃないですか。向こうも気があるんでしょ。」
「………そんな事…分かんない」
カズ「ショウさんさ…」
ふぅ、と溜め息を付き、カズが隣に座り直した。
カズ「………彼は違うかもよ?ショウさんの全て…受け入れてくれるかもしれない」
「………」
カズ「舞ちゃんもそれを望んでるでしょ?」
「もういいから」
カズの言葉を遮る様に、俺は立ち上がった。
カズ「ショウさん…」
「ありがとカズ。でもいいから。大丈夫」
カズ「………本当に?」
「うん」
カズ「………分かりました。もう何も言いません」
あっさりと立ち上がり、カズは入口に向かった。
カズ「………ショウさん」
「………」
カズ「でもさ…ショウさんは幸せになる権利…普通の人よりはあると思うよ。少なくとも俺はね」
そう言い残して、カズは部屋を出て行った。
「………」
………彼の事なんて何も知らない。
知ってるのは…名前と…勤めてる会社。それも先輩情報。
恋愛はしないって決めてるんだ。あの時そう決めた。
男娼なんてやってる人間にろくな人間が寄って来る筈なんて無いんだ。
でも…彼の真っ直ぐな瞳を見ると…引き寄せられる。
何かが沸いて来る。
でももう嫌だ。感情に流されて傷付くのは。
俺は…そんなに強くない。
店長「ショウ。指名だぞ。赤岩様だ」
扉が開き、店長から声を掛けられる。
店長「どうした。体調悪いのか?」
「………いえ、大丈夫です」
ふぅ、と息を吐き、俺は立ち上がった。
答えを出せないまま、俺は客の待つ部屋へと足を踏み入れた。