第3章 接近
「う、ん…」
徐々に覚醒し、目を開くと、いつもと違う景色に一瞬驚いた。
目の前には…初めて見るショウさんの寝顔。
凄くあどけない寝顔。
俺はそっと…ショウさんの頬に触れた。
ショウ「ん…」
ピクリと彼が目を覚ます。
「あ、ごめん起こしちゃった…?」
ショウ「ん…大丈夫…おはよ…」
「おはよ」
目を擦り、彼が俺を見つめた。
「………」
ショウ「………」
見つめ合いながら思い出す。
今…俺達はベッドの中で抱き合ってるんだって事。
状況がそうさせたのか、彼への気持ちが消え去ったと思っていたのは勘違いだったのか…その時の俺には分からなかった。
俺はショウさんの身体を抱き締めたままショウさんを見つめた。
ショウ「………」
ショウさんもジッと俺を見つめていた。
「………」
俺はそのまま吸い寄せられる様に…顔を近付ける。
それに答える様にゆっくりと目を閉じた。
ショウ「………ん…」
腰を引き寄せながら俺はその柔らかい唇に、自分のを重ねた。
重ねるだけのキスをした後、直ぐに唇を離した。
「………ショウさん…」
ショウ「………」
ショウさんが何かを言おうと口を開こうとしたその瞬間、
『ピピピピピピピ…』
アラームが鳴った。
「………」
ショウ「あ…」
「ご、ごめん時間だね」
拒絶されるのが怖くて、俺は慌ててベッドから起き上がった。
ベッドに腰掛け、慌ててジャケットを羽織った。
ショウさんは何も言わずにシーツを正しながら俺の準備が終わるのを待っていた。
「ごめんお待たせ。行こう」
立ち上がると、ショウさんはカギを持ち、俺の顔を見ないまま部屋を出て行った。
俺も…その後に続いた。
店長「相葉様お疲れ様でした。ありがとうございます。またのご来店をお待ちしてます」
「あ、はい…ありがとうございました」
ショウ「………ありがとうございました」
店長の横でショウさんも頭を下げた。
でもやっぱり目は合わせてくれなくて。
………嫌われたのか…。
俺は何も聞く事が出来ないまま、店を後にした。