第23章 番外編『兄ちゃんのお嫁さん』
ー祐介sideー
雅紀「翔…ごめん」
翔「………」
雅紀「本当に反省してるから…怒んないで…」
店内に響くピリピリした空気。
必死に謝る兄ちゃんを、翔くんは完全に無視して午後の準備に取り掛かってる。
父ちゃんも母ちゃんも…心配そうに2人のやり取りを見ていた。
雅紀「翔ってば…謝ってるじゃん…」
翔「だから何。謝れば許されるとでも思ってんの」
雅紀「いやだから…言葉の綾ってゆーか…」
翔「へぇ」
翔くんがガチ切れしたのは初めて見たけど…怖い…。
兄ちゃん完全に尻に敷かれてるな…。
翔「やっぱり雅紀は嫌だって思ってるんだよね。俺が男娼だったって」
雅紀「いや、ちが…」
翔「じゃあ何であんな事言うんだよ!俺は客商売だから笑顔で接客してるだけ!」
雅紀「分かってる…本当にごめん!お客さんが翔にデレデレだからつい…」
翔「だからって…あんな事言わなくてもいいじゃんか馬鹿!酷いよ雅紀!『水商売仕込みの笑顔はするな!』なんて!」
雅紀「………ごめん…」
翔「馬鹿!大嫌い!!」
ついに泣き出してしまった翔くんは厨房の奥まで走って行ってしまった。
雅紀「翔!」
慌てて兄ちゃんが後を追う。
父「祐介ほっとけ。すぐに仲直りするさ」
父ちゃんがそう言うものの…俺は心配になって後を追った。