第20章 after one year
松岡「ごちそうさまでした。いや…本当に美味い」
「良かったです」
綺麗に平らげた食器を母ちゃんがニコニコと笑顔で下げて行く。
松岡「今度は妻も連れて来るよ」
「ありがとうございます。そう言えば…いつ日本に?」
松岡「昨日です。東京本社で会議があってそれで」
「そうですか…千葉までわざわざすみません」
松岡「いえ。今日は会議が午前中で終わったので。それに…話したい事があったものですから」
「あ…そう言えばさっき…」
松岡「ええ」
松岡さんの話とは…恐らく翔の事だろう。
「………翔ですか」
松岡「うん…まぁ…」
松岡さんは言い辛そうに言葉を濁した。
「大丈夫ですよ。翔は家族公認です。一緒に働いてますから。いや…働いてた、かな…」
松岡「………働いてた…?」
「………ある日突然消えたんです。もう…1年になる…」
松岡「………」
「もしかして…東京の舞ちゃんの所かと思って連絡を取ったんですけど。今東京の大学に通ってて。でも居なくて。連絡取った後…舞ちゃん宛に翔から預金通帳と印鑑が送られて来たって…。多分…舞ちゃんの将来の為にって貯めてたお金です」
松岡「………」
「すみません松岡さん…俺…翔の事幸せに出来てなかったのかも…」
ポタリ、とテーブルに涙が溢れる。
松岡「相葉さん」
「はい…」
松岡「翔は望んで出て行ったんじゃないですよきっと」
「ぐすっ…でも…」
松岡「………俺が千葉まで来たのは…どんな理由があると思いますか」
「え…」
松岡「翔は…東京に居ますきっと。貴方と家族を守る為にね」
「え…?」
東京…?
俺は一瞬松岡さんの言葉を疑った。
松岡「相葉さん。東京に行きましょう。翔を助けに…」
「………」
事態がよく飲み込めない俺は…ただ目の前の松岡さんの顔を見つめていた。